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立ち読み

悲しきアメリカ−その真の様相

ミシェル・フロケ

大井 孝、土屋 元訳

出版年月2018年10月20日発売

ISBNコード 978-4-909560-28-5 C0036

本体価格2,400円

四六判・並製

縦256頁

​キーワード:一般書、アメリカ、時事、社会、歴史

著者紹介

ミシェル・フロケ(Michel FLOQUET)

著者は1958年生まれのフランスのジャーナリストである。リール大学院でジャーナリズムを専攻。卒業後、フランスのテレビ局・TF1(テレビ・フランス1)に入社。そして同テレビ局の看板番組である「夜8時のニュース」の編集責任者(2008年〜2011年)を務めた。2011年から5年間は同放送局のワシントン特派員となり、2016年(〜2018年)には同報道部副部長に就任した。なお、著者は1981年から特派員としてレバノン内戦、ルワンダの虐殺、ソマリア内戦、旧ユーゴスラビア紛争、湾岸戦争、イラク戦争、イスラエル・パレスチナ紛争など世界の大きな紛争の取材に当たっている。現在は、アメリカ論者としてフランスのジャーナリズム界で活躍。著書には、ユーゴスラビア紛争の取材にもとづく『ベルナールKのユーゴスラビアでの苦難』(未邦訳)、『フランスよ、お前の軍隊がずらかっている』(同)がある。

訳者紹介

大井 孝(おおい たかし)

東京学芸大学名誉教授。パリ第2大学政治学国家博士、同大学政治学高等研究課程修了(仏政府給費生)、早稲田大学政治学士、同修士、コロンビア大学政治学修士(フルブライト給費生)。前国際教育振興会理事長。専門は国際政治史、米国外交史。主要著作:『欧州の国際関係 1919〜1946−フランス外交の視角から』(たちばな出版 2008年)。

土屋 元(つちや はじめ)

関東学院大学国際文化学部・社会学部講師、国際教育振興会講師。京都大学経済学士、パリ第10大学歴史学DEA課程(博士前課程・専門研究課程)修了、東京都立大学経済学博士課程単位取得満期退学。元沖電気工業株式会社勤務。共著:『比較文化事典』(関東学院大学国際文化学部比較文化学科編、明石書店、2015年)。

内容

アメリカというと、自由、シリコンバレー、グーグル、フェイスブック、ウォール街、ハリウッド、機会均等の国という神話が出来上がっている。しかし一方では、本書でフランス人ジャーナリスト・ミシェル・フロケが伝えるように、もう一つのアメリカがある。筆者は、5年間の現地調査をもとにアメリカという国が抱える問題点--国家予算の半分を軍事費に当てていること、子供の4人に1人が貧困によって公費の給食を受けていること、総人口比で世界最大数の受刑者がいること、アメリカ全土で毎年30人以上の人が銃火器で死亡していること、大学の授業料は年額4万ドルという高額であること、課税率は最富裕者には15%という低額である反面、貧困者には25-30%という高額の課税が課されていること、二大政党が支配する民主主義制度の下では、その維持と政権の分有のために両党が選挙年には実に70億ドルという大金を使っていること--など、まさに驚くべき社会を形成していることを指摘している。このように本書は、新大陸発見から原住民を迫害のうえ、さらに奴隷を使って大きくなってきたアメリカの体質を、歴史を辿りつつ、今日抱える様々な問題を浮き彫りにしたものである。この一冊でアメリカという国の形が手に取るように分かるであろう。

目次

日本語版への序文 

訳者まえがき 

改訂版の序文

プロローグ

第一章 富裕者たちの幸福

超富裕層の形成

大学教育費の高騰と格差社会の固定化

金儲けと倫理観

第二章 アパラチア山脈の掘削

地下資源開発と地震の頻発

自然環境の破壊利用

最初のアメリカ人批判

セオドア・ルーズベルトの環境保護政策

天然資源の乱費

過剰消費の国アメリカ

地球温暖化論の否定

第三章 売りに出されるインディアン虐殺の記念地区ウーンデド・ニー

事件の概要

初期の入植者たちとインディアンとの交流

西部開拓の始まり

スペインによる中南米支配との比較

インディアンとフランス

知られざるインディアンの歴史

第四章 共に生きるとは——排他的な居住集団

新郊外住宅地エクサーブズ

他者への無関心

若者たちの人間関係——黒人の差別

大学内の男女関係

どこにでも警察がいる

弁護士の天国アメリカ

ニックの例

ロペスの例

第五章 貧困者には情け無用

夜間駐車場

ワーキングプーア

ウォルマートとアマゾンの事例

貧困対策の遅れとフードスタンプ

富裕者を利する景気回復

貧困独居老人

第六章 ザ・ジャングル——食品製造業界の裏面

衛生管理の不備

ファストフードの影響と支配

本物の食品とは

農食品ビジネスの集中度

FDAの監督不備

最主力品トウモロコシの支配

水資源の枯渇

遺伝子組み換え食品と肥満

食生活と寿命

第七章 分譲住宅地での死

銃社会の日常事件

武器保有で病む国

安易な購入手続きと高性能銃器の推奨

被害の拡大

オバマの反応

NRA(NationalRifleAssociation)全米ライフル協会による武器保有奨励

変身したNRA

NRAの政治活動

もう一つの事件

第八章 ファーガソン症候群——黒人の受難

黒人大統領と黒人差別

近年の暴動事件

黒人男性の命運

国内戦争の日常化

根強い黒人差別

知られざる黒人奴隷の歴史

南北戦争とその後の現実

メキシコ系住民と黒人の立場との比較

オバマの選出と人種問題

第九章 世界最大の刑務所

高齢者と精神病者であふれる刑務所

高圧的な政策

刑務所が精神病院の代替か?

警察国家アメリカ

スワット・チーム

重装備をする警察と民間人犠牲者

住民と警察の断絶

警察と精神病患者

ボランティア協力者

第一〇章 ビッグブラザー

監視されるジャーナリスト

他のジャーナリスト、そして政府職員の場合

九・一一と一六の頭を持つ怪獣

防ぎ得たはずの九・一一事件

特異な諜報体制

アメリカの自由

第一一章 神の御心のままに

公的生活と宗教

オバマケアとアメリカ人

アメリカの政教分離

ビリー・グラハム

もう一人のキーパーソン—シド・リチャードソン

第一二章 恒常的な戦争

公的生活、私的生活、宗教

戦争の継続

失敗の歴史から学ばないアメリカ

軍に栄光あれ

一般市民と戦争

退役軍人の境遇

アメリカの戦争と倫理観

オバマと戦争

第一三章 民主主義の終焉か?

金が動かす選挙

スーパーPAC

コーク兄弟

民主主義と政治献金

金力と政治

第一四章 オバマの八年間は無策だったのか?

黒人大統領の出現

期待はずれの内政実績

中近東政策の混迷

オバマの躊躇

ロシアの介入

弱い大統領

第一五章 ドナルドのアメリカ

予想外の結果

トランプの勝利の意味

訳者あとがき

16社協賛

出会った本はみな新刊だ!

専門書販売研究会は、2000年に人文・社会科学の専門書を発行している版元の4人の発起人によって「4社の会」として発足しました。小社の代表取締役である上野もその一人です。近年の、市場環境の変化は、専門書販売にとって厳しいものになりました。しかし長年研究を重ね出版された研究書・著作をうずもれさせてしまっては社会的損失と思い、「はじめてあった本は、いつも新刊」として読者へ・研究者へ・図書館へ書籍情報を発信することにしました。会員も増え「専門書販売研究会」と名称を変え、分野も多彩になり哲学・歴史・経済・農業・芸術まで網羅した会となりました。現在は16社で専門書の販売のための研究・情報を共有する活動をしております。
 これからも、コンセプト「はじめてあった本は、みな新刊」のもとに、日ごろ目にすることのない既刊書の再チャレンジを目指し、「こんな本もあったんだ」と言っていただけるように読者との出会いを目指します。​

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